第七回 角町 大黒屋内 大淀 

 江戸代表する悪所場、遊郭ねる吉原、時代ごとにその様相えた。吉原最高位遊女「太夫(たゆう)から「花魁(おいらん)」、そして歌川国貞活躍した江戸後期には「呼ばれている。彼女たち上級遊女「太夫」名乗っていた時代、客はいったん揚屋ばれるがりそこへ遊女せて遊興する仕組みだった。妓楼(ぎろう)から揚屋きらびやかな盛装、多くのれて、吉原遊郭のメーンストリートである仲之町太夫道中こそ、太夫がなくなった後、あるショーとして、新造出しや仲之町花見された「花魁道中」原形なのである。 

 

国貞、道中をする振袖新造(見習期間中遊女)、番頭新造(上級遊女につくマネジャー遊女)、遣やり手(遊女たちの監督。古参遊女などがめた)、長柄傘をさしかける姿、禿(かぶろ、上級遊女見習いをねて身辺雑用める少女)えた大黒屋・大淀道中姿いている。華やかな横兵庫げたされているべっくしは2枚。これは遊郭前身、上方まれた風呂屋にありそこで湯女(ゆな)として客の垢(あか)を、櫛使ってっていたたちが、髪かすまでのなどでをもてなす際、仕事用して2枚挿したことにちなむという。五節供のひとつ上巳(じょうし) つまり節句時季なのだろうかひなりの意匠一番上、仕掛(打2枚、3枚そのには小袖3枚、さらに豪華前結びにしてらしている。着込んだ衣装褄(つま、裾のこと)がきれいにっているのも、上級遊女こなしの特徴。体すセクシーさではなく、重華麗衣装けない遊女りが、遊客たちのをそそったのだろうか 

 文=橋本麻里 日本美術を主な領域とするライター・エディター。明治学院大学・立教大学非常勤講師、高校美術教科書の編集・執筆を行なう。近著に『驚くべき日本美術』(山下裕二さんとの共著、集英社インターナショナル)、『京都で日本美術をみる 京都国立博物館』(集英社クリエイティブ)など著書多数。

 

 「角町 大黒屋内 大淀」 19世紀前期の吉原遊郭で人気を誇った大黒屋の三輪山、扇屋の花扇ら、3人の上級遊女。その贅(ぜい)を凝らした艶(あで)姿を写した3枚続きの豪奢(ごうしゃ)な美人画は、今で言うモード雑誌のファッショングラビアか。

歌川国貞 天保前期(1830139)Nellie Parney Carter Collection―Bequest of Nellie Parney Carter, 34.424-b Photograph © 2015 Museum of Fine Arts, Boston

 

「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」

会場/Bunkamuraザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1

会期/2016年3月19日~6月5日

開館時間/10001900 毎週金曜・土曜は2100まで

(入館は2030まで)

休館日/無休 入館料/一般1500

問い合わせ先/☎03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

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